2020年4月5日日曜日

姉妹の桜あらそい その後


桜が散り始めました。
 
疎水に散る桜



前回、源氏物語絵巻に描かれた、竹河の巻の、庭の桜の所有権を姉妹が争う場面をご紹介しました。
玉鬘と髭黒との間にできた娘たちです。

囲碁の勝負に妹君が勝って、桜は妹君のものということになりました。

数日して、強い風が吹いて、慌ただしく散る桜を見て、負けた姉君は「私に心を寄せてはくれなかった桜だけど、そうは思っても、散るのを見ると心が騒ぐわ」と言い、姉付きの侍女は「こちらのものにならなくっても悔しくなんかないわ。どうせ散って無くなってしまうんですもの」と負け惜しみを言います。

妹君は「あ~ら。花は散ってしまうけど枝だって私のものよ」と言い返します。
妹付きの侍女は「花びらよ、散ってもこちらに寄っておいで」と付け加え、妹側の童女は、庭に下りて花びらを集めて来て「私たちのものよ」と誇らしげに言うのでした。
 本文をご紹介しましょう。

負け方の姫君「桜ゆゑ風に心のさわぐかな 思ひぐまなき花と見る見る」

御方(姉君方)の宰相の君、「咲くと見てかつは散りぬる花なれば 負くるを深き恨みともせず」と聞こえ助くれば、

右の姫君(妹君)「風に散ることは世の常枝ながら うつろふ花をただにしも見じ」

この御方の大輔の君「心ありて池のみぎはに落つる花 あわとなりてもわが方に寄れ」

勝ち方の童女おりて、花の下にありきて、散りたるをいと多く拾ひて、持て参れり。
「大空の風に散れども桜花 おのがものとぞかきつめて見る」

《竹河の巻》 

高瀬川に散り淀む花びら

やりとりが、全て歌で行われているのが優雅です。

こんなふうに和やかに仲良く暮らしてきた姉妹ですが、やがて姉君は冷泉院に、妹君は帝に嫁ぎ、それぞれに悩みを抱えながら別々の人生を歩むことになります。