2019年1月30日水曜日

五節の舞姫と日蔭の蔓(サルオガセ)



ある年の新嘗会で、源氏の家からも五節の舞姫を出すことになり、惟光の娘が選ばれました。
美しく装った舞姫を見て、源氏の君は、昔、舞姫に恋したことを思い出します。
十数年前の、まだ若かったころのことです。ふと懐かしくなって、その女性に手紙を出しました。彼女のほうは、今も源氏のことを思っていたものですから、すっかり喜んで返事を出しました。

木の枝にぶら下がるサルオガセモドキ
源氏の歌

 をとめ子も神さびぬらし 天つ袖ふるき世の友よはひ経ぬれば


昔の舞姫の返歌

 かけて言へば今日のこととぞ思ほゆる 日蔭の霜の袖にとけしも 

源氏の歌は「昔は乙女だったあなたも年をとっただろうね。私もすっかり年をとったのだから」とちょっと失礼な歌です。

舞姫の返歌は「わざわざお言葉を掛けていただきますと、あの日が今日のことのように思われます。情をかけていただいたことも」と昔を懐かしんでいます。

同じ日、源氏の息子夕霧も、今年の舞姫を垣間見て、恋心を抱き、その舞姫、惟光の娘に手紙を送ります。親子で同じことをしているのがおかしいですね。

夕霧の歌

 ひかげにもしるかりけめや をとめ子が天の羽袖にかけし心は

「日の光にもはっきりわかったでしょうか。天の羽衣の袖を振るあなたに恋した私の心は」

昔の舞姫の歌にも、夕霧の歌にも【ひかげ】と出てきます。
どちらも掛詞になっていて、いわゆる【日かげ(日の光)】という意味と【日蔭の蔓】を意味しています。

本物のサルオガセはもう少し細い

日蔭の蔓とはサルオガセのことで、これを五節の行事の神事にあたる上達部や殿上人、舞姫は、必ず頭にかざったということです。
後世には、青い組みひもで代用したとか。

あの地味なサルオガセも大事な役割を担っていたのです。

本物のサルオガセの写真が撮れなくて、よく似たサルオガセモドキにしました。遠目には同じに見えます。







<<朗読会を開催します>>
~声と響き 木霊する源氏物語~   朗読と唄で織りなす物語[第二弾]
【第一部 明石の君の物語/第二部 六条御息所の物語】

【日時】 2019年4月21日(日)14:00 開演
           (13:00 開場/15:30 閉演)
【会場】 京都堀川音楽高等学校 音楽ホール
【入場料】 前売券1,500円/当日券2,000円/高校生以下無料/全席自由席
 「チケットぴあ」でご購入  Pコード「490-943」
     ※チケットのご購入後にキャンセルすることはできません。
【前売券 販売期限】 2018年12月1日(土)~2019年4月20日(土)まで
 ▶詳しくはコチラ


2019年1月22日火曜日

番の水鳥・八の宮の悲しみ


宇治十帖に登場する八の宮という方は、かつて、右大臣側が、東宮の位につけようと企んだお方です。時の東宮が、光源氏を後見役としていたことから、源氏と共に排斥しようとしたのでした。その企みが失敗した後では、白い目で見られ、誰からも見向きもされず、世間知らず故に、財産も失ってしまうのです。

慰め合って生きて来た妻にも先立たれ、二人の娘を育てなければならないという義務感に支えられて、かろうじて生きている、そんな八の宮でした。
乳母さえ逃げ出して、宮が、幼い娘たちの世話までしなければならなかったとあります。

庭の池に、つがいで遊ぶ水鳥を見て、宮は亡くなった妻を思って涙します。

春のうららかなる日影に、池の水鳥どもの、羽うちかはしつつ、おのがじしさへずる声などを、常ははかなきことに見たまひしかども、つがひ離れぬをうらやましくながめたまひて、君たちに、御琴ども教へきこえたまふ。

いとをかしげに、小さき御ほどに、とりどり掻き鳴らしたまふものの音ども、あはれにをかしく聞こゆれば、涙を浮けたまひて、

「うち捨てて つがひさりにし水鳥の かりのこの世に たちおくれけむ       心尽くしなりや」と、目おしのごひたまふ。(橋姫の巻)


宮の歌は「いつも番(つがい)でいたものを、みすてて去ってしまった水鳥、そのかりの子は、どうしてはかないこの世に残ったのか」と、母親に先立たれた娘たちを悲しく思う歌です。

宮は出家こそしていませんが、常に経を手から離さず、仏道精進の日々を送っていました。


後に、宮一家は京の家を火事で失い、宇治の山荘に移り住みます。薫がこの宮の存在を知って、宇治に通うようになったことから、宇治十帖が展開します。二人の娘は成長して、大君中君として登場する女君です。









<<朗読会を開催します>>
~声と響き 木霊する源氏物語~   朗読と唄で織りなす物語[第二弾]
【第一部 明石の君の物語/第二部 六条御息所の物語】

【日時】 2019年4月21日(日)14:00 開演
           (13:00 開場/15:30 閉演)
【会場】 京都堀川音楽高等学校 音楽ホール
【入場料】 前売券1,500円/当日券2,000円/高校生以下無料/全席自由席
 「チケットぴあ」でご購入  Pコード「490-943」
     ※チケットのご購入後にキャンセルすることはできません。
【前売券 販売期限】 2018年12月1日(土)~2019年4月20日(土)まで
 ▶詳しくはコチラ