やっと見つけた屋根のしのぶ草 |
つい最近まで、苔むした門の屋根に【のきしのぶ】がびっしり生えている光景をよくみかけたように思います。
今回、このブログのために心当たりの箇所をいくつも探したのですが、無い!!!みんな新しくなっていて、苔やのきしのぶとは無縁のピカピカつるつるの門になってしまっていました。
今や【のきしのぶ】は軒ではなく、樹木の幹にわずかに棲息しているのでした。
【のきしのぶ】といえば、百人一首100番の「ももしきやふるき軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり」という順徳院の歌を思い出される方も多い事でしょう。承久の変に敗れて佐渡で没した悲劇の天皇ですよね。
源氏物語でしのぶ草が登場するのは光源氏が夕顔を連れ出しそこで死なせてしまった、なにがしの院の門と、末摘花がひたすら源氏の訪れを待ち続けた陋屋の軒です。
そのわたり近きなにがしの院におはしまし着きて、預り召し出づるほど、荒れたる門のしのぶ草茂りて見上げられたる、たとしへなく木暗し。霧も深く露けきに、簾をさへ上げたまへれば、御袖もいたく濡れにけり。「まだかやうなることをならはざりつるを、心づくしなることにもありけるかな。 いにしへも かくやは人のまどひけむ わがまだ知らぬ しののめの道ならひたまへりや」とのたまふ。女はぢらひて「山の端の 心も知らで ゆく月は うはの空にて 影や絶えなむこころぼそく」とてもの恐ろしうすごげに思ひたれば・・・・(夕顔の巻)
光源氏は、まだ17歳、恋の冒険に夢中だった頃です。偶然知った素性も知らぬ女性を、普段は使われていない別邸に連れ出して、二人だけの時を楽しもうとしたわけですが、その夜、この女性は物の怪に襲われて急死してしまいます。
上記の夕顔が詠んだ歌も、まるで、自分の死を予感していたような不吉さを感じさせます。
木の幹に生えたしのぶ草 |
末摘花の巻では、廃屋かと見まごう陋屋を訪ねた源氏の君が、屋内を見た時「しのぶ草にやつれたる上の見るめよりは、みやびやかに見ゆるを・・」と、家の外は軒や屋根に、しのぶ草が生えていて、荒れ果てた感じなのに、家の中はそれほどでもないなと思ったと書かれています。
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