2018年6月8日金曜日

柏木の宿




柏の木と言えば、柏餅をくるむあの大きな葉っぱを、どなたもすぐに思い浮かべられることでしょう。

そして、源氏物語に馴染んでおられる方なら、あの柏木青年を連想なさることでしょう。光源氏の若い妻とあやまちを犯し、それが源氏に知られてしまったことから自滅してゆく悲劇の貴公子です。

彼が、柏木と呼ばれる所以は、彼が衛門督という官職についていたことによります。
柏の木には、葉守の神が宿るとされることから、内裏を警備する担当部署を柏木と呼んだようです。

柏木青年が亡くなった後、親友であった夕霧は、柏木の遺言に従って、その未亡人落葉の宮をしばしば見舞って慰めます。そのうち、次第に彼女に心惹かれるようになるのですが。

落葉の宮が、母上と二人で暮らす寂しい邸には、柏の木が青々と枝を広げていました。

御前の木立ども、思ふことなげなるけしきを見たまふも、(夕霧は)いとものあはれなり。柏木と楓との、ものよりけに若やかなる色して、枝さしかはしたるを、「いかなる契りにか、末あへるたのもしさよ」などのたまひて、忍びやかにさし寄りて、「ことならば馴らしの枝にならさなむ 葉守の神のゆるしありきと (この交わり合った枝のように親しくして頂きたい。亡き方のお許しもあったということで) 御簾の外の隔てあるほどこそ、うらめしけれ」とて長押に寄りゐたまへり。(柏木の巻)


因みに柏は落葉樹ですが、新春に若葉がそろうまで、枯葉が落ちずに残ることから、「葉守」と呼ばれるということです。

柏の木は、なかなか見つからず「和菓子屋にしかないのか!」と思っていましたが、植物園でやっと発見しました。





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