2018年12月5日水曜日

匂宮、宇治の紅葉狩



今年の紅葉は期待できないと言われていましたが、それでも、樹々は、赤く黄色くあるいは橙色に、それぞれの秋の衣裳を纏いました。
春の桜も素晴らしいけれど、秋の紅葉の輝きは、この国に生きていることの幸せをより強く感じさせてくれるのではないでしょうか。

王朝人は、季節の移り変わりにまことに敏感でした。衣裳の色目はもちろん、部屋にくゆらせる薫香にも、季節感を配しました。

とりわけ、春と秋は彼らの好んだ季節で、春の花と秋の紅葉を現代人の何倍も何倍も楽しみ、味わいつくそうとしたように思います。

宇治十帖には宇治川の紅葉狩りが描かれています。
匂宮が宇治に住む愛人中君に逢いに行く口実に、紅葉狩りを計画したのです。夜になったらこっそり抜け出して、対岸に住む中君の元を訪ねる予定でした。ところが、後を追って大勢の貴族たちがやってきて、大宴会となり、抜け出すことは叶いませんでした。

十月朔日ころ、網代もをかしきほどならむと、そそのかし聞こえたまひて、紅葉御覧ずべく申し定めたまふ。


それを知った中君方では邸を清め、対岸から匂宮一行の様子を眺め、お出でを心待ちにしています
嵐山の紅葉


  船にてのぼりくだり、おもしろく遊びたまふも聞こゆ。ほのぼのありさま見ゆるを、そなたに立ち出でて、若き人々見たてまつる。正身(匂宮本人)の御ありさまは、それと見わかねども、紅葉を葺きたる船の飾りの、錦と見ゆるに、声々吹き出づるものの音ども、風につきておどろおどろしきまでおぼゆ。(略)たそかれ時に、御船さし寄せて遊びつつ文作りたまふ。紅葉を濃く薄くかざして、海仙楽というものを吹きて、おのおの心ゆきたるけしきなるに、宮はあふみの海のここちして、遠方人の恨みいかにとのみ、御心そらなり。《総角の巻》 




これも宇治ではなく嵐山

匂宮たちの乗る船は屋根に紅葉が敷き詰めてあり、人々は頭に紅葉を飾って、笛を吹いたり、詩を詠んだりしています。なんと風流な遊び!人々は楽しんでいますが、匂宮は中君のことを思って気が気ではありませんでした。






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