2019年9月7日土曜日

源氏物語に登場する鳥



物語の中には、「鳥」という語が結構多く出てきますが、大部分は「鶏」のことで、つまり、夜明けを告げるものとしての鶏の声です。

それ以外で、具体的に出て来る鳥の名前は、雀、烏、鷹、雁、鶯、梟、千鳥、鳩くらいだと思います。水鳥というのも何回かでてきます。
いずれにしても、今、私たちの周りにいる鳥たちと変わらないようです。

雀と烏が登場するのは、あの、良く知られた場面、源氏の君が、北山で、若紫を見初める場面です。

鳥の写真はなかなかうまくとれません

髪は扇をひろげたるやうにゆらゆらとして、顔はいと赤くすりなして立てり。「何ごとぞや。童女と腹立ちたまへるか」とて、尼君の見上げたるに、すこしおぼえたるところあれば、子なめりと見たまふ。「雀の子を犬君が逃がしつる。伏籠のうちに籠めたりつるものを」とて、いとくちをしと思へり。このゐたる大人、「例の心なしの、かかるわざをしてさいなまるるこそ、いと心づきなけれ。いづかたへかまかりぬる。いとをかしうやうやうなりつるものを。烏などもこそ見つくれ」とて立ちてゆく。《若紫の巻》 


鳩が登場するのは、夕顔の巻。某の院で、夜、鳩が鳴いて、その鳴き声を、夕顔が怖がったとあります。

竹の中に家鳩といふ鳥の、ふつつかに鳴くを聞きたまひて、かのありし院にこの鳥の鳴きしを、いと恐ろしと思ひたりしさまの、おもかげにらうたく思ほしいでらるれば・・・・《夕顔の巻》 


単に「鳥」とある時はどんな鳥なのでしょうか。

例えば、源氏の君が明石の君に贈った着物の柄は、蝶と鳥が飛び交う絵柄で、それを見た紫の上が、明石の君の美しさを想像して、密かに嫉妬しています。

絵合の巻では、御前での絵合わせの後、宴が一晩中続いて、夜明けになったとあり、ここでは、朝を知らせるのが、鶏の鳴き声ではなく、鳥のさえずりになっています。

和琴、権中納言賜りたまふ。さはいへど、人にまさりて掻きたてたまへり。親王、筝の御琴、大臣、琴、琵琶は少将の命婦つかうまつる。上人のなかにすぐれたるを召して、拍子賜はす。いみじうおもしろし。明け果つるままに、花の色も人の御容貌などももほのかに見えて、鳥のさへづるほど、ここちゆき、めでたき朝ぼらけなり。《絵合の巻》 


雅な楽の音にニワトリの声は似合いませんものね。

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