2018年1月15日月曜日

源氏物語の雪の朝


2018.1.14高野川
今朝、この冬初めて積雪を見ました。京都では一冬に何度かは雪の積もる日がありますが、王朝時代は今よりはもっと雪の日が多かったようです。
雪の朝で印象的な場面を二つご紹介したいと思います。
一つは光源氏17歳のころ、末摘花の元で一夜を過ごして、迎えた朝です。

からうして明けぬるけしきなれば、(源氏は)格子手づからあげたまひて、前の前栽の雪を見たまふ。(略)まだほの暗けれど、雪の光に(源氏が)いとどきよらに若う見えたまふを、老人ども笑みさかえて見たてまつる。(略)(源氏は末摘花を)見ぬやうにて、外のかたをながめたまへれど、後目はただならず。いかにぞ、うちとけまさりのいささかもあらばうれしからむとおぼすも、あながちなる御心なりや。まづ居丈の高う、を背長に見えたまふに、さればよと、胸つぶれぬ。うちつぎて、あなかたはと見ゆるものは、御鼻なりけり。ふと目ぞとまる。普賢菩薩の乗物とおぼゆ。あさましう高うのびらかに、先のかたすこし垂りて色づきたること、ことのほかにうたてあり。色は雪はづかしく白うて真青に、額つきこよなうはれたるに、なほ下がちなる面やうは、おほかたおどろおどろしう長きなるべし。痩せたまへること、いとほしげにさらぼひて、肩のほどなどは、いたげなるまで衣の上まで見ゆ。何に残りなう見あらはしつらむと思ふものから、めづらしきさまのしたれば、さすがにうち見やられたまふ。(末摘花) 



まだ夜明け前の薄暗い時間ながら、雪明かりで源氏は末摘花の姿をしっかり見てしまったのでした。これまでに知っているどの女性とも違う姿にショックを受けつつも目を逸らせないでいるのでした。鼻が「普賢菩薩の乗物」つまり「白象」のようだとはあんまりな言いようですが。



もう一つの雪の朝は、源氏40歳の頃、女三宮の降嫁を受け、しきたりに従って三晩続けて彼女の元に通ったその三日目の夜明けです。紫の上のことを夢に見て、まだ夜明けには間のある早い時間に源氏は女三宮のもとを引き上げて帰ってきます。

 雪は所々消え残りたるが、いと白き庭の、ふとけぢめ見えわかれぬほどなるに、「なほ残れる雪」と忍びやかに口ずさびたまひつつ、御格子うちたたきたまふも、久しくかかることなかりつるならひに、人々も空寝をしつつ、やや待たせたてまつりて、引きあげたり。「こよなく久しかりつるに、身も冷えにけるは。・・・・」(若菜上) 

紫の上の女房たちは、源氏に意地悪してわざとなかなか格子を上げず、源氏は雪の庭を見ながら震えています。源氏は、紫の上が亡くなった後、この朝のことを思い出し、濡れた袖を隠した彼女のいじらしさを思います。


入道の宮(女三宮)のわたり始めたまへりしほど、そのをりはしも、色にはさらに出だしたまはざりしかど、ことにふれつつ、あぢきなのわざやと、思ひたまへりしけしきのあはれなりしなかにも、雪降りたりし暁に立ちやすらひて、わが身も冷え入るやうにおぼえて、空のけしきはげしかりしに、いとなつかしうおいらかなるものから、袖のいたく泣き濡らしたまへりけるをひき隠して、せめてまぎらはしたまへりしほどの用意などを、夜もすがら、夢にても、またはいかならむ世にか、とおぼし続けらる。曙にしも、曹司におるる女房なるべし、「いみじうも積りにける雪かな」と言ふを聞きつけたまへる、ただそのをりのここちするに、御かたはらのさびしきも、いふかたなく悲し。(幻)




「大変な雪だこと」などと言う女房の言葉はあの朝と同じ。同じような雪の朝だけれども、隣にいたあの人はいない・・・・・・。自然の営みは繰り返されるけれど、人は消えてゆく・・・・・・。
源氏は、夢ででも逢いたいと紫の上を恋い偲ぶのでした。







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