上高地梓川のほとりには藤袴がたくさん咲いていました。(藤袴は類似の花が色々あるそうなので、もしかしたら純正藤袴ではないかもしれませんが。)
源氏物語には藤袴という巻があります。これは、夕霧が玉鬘という女性に、藤袴の花を歌と共に贈った所から付けられた巻名です。
夕霧というと、とにかく真面目一辺倒で、父親の光源氏とは対照的な人物と思われがちですが、女性に興味がなかったわけではありません。ただ、父親のように華やかな恋のアヴァンチュールとは無縁でした。
以前、ちらりと垣間見した玉鬘の美しさに惹かれていた夕霧は、父の使いで玉鬘を訪れた機会に恋心を訴えます。
(夕霧は)かかるついでにとや思ひ寄りけむ、蘭の花(藤袴の別名)のいとおもしろきを持たまへりけるを、御簾のつまよりさし入れて、「これも御覧ずべきゆゑはありけり」とて、とみにもゆるさで持たまへれば、うつたへに思ひも寄らで取りたまふ御袖を、引き動かしたり。
同じ野の露にやつるる藤袴あはれはかけよかことばかりも《藤袴の巻》
藤袴の花を、御簾の端からさし入れて、それを受取ろうと手を伸ばした玉鬘の袖をつかまえて、求愛の歌を詠みかけています。
玉鬘は、まったく相手にしませんでしたが。
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