2019年2月27日水曜日

源氏物語に登場する犬



以前ご紹介しましたように、源氏物語の中で、猫は、結構重要な役割を担っていました。では、犬はどうでしょう。

当時、猫は貴族の愛玩動物として、珍重されていたようですが、犬のほうはペットではありませんでした。専ら実用的なものとして、番犬や猟犬として役割を担っていたようです。

恐ろし気な犬はなかなか見つからず
源氏物語では、犬は、一回だけ、恐ろしい番犬として登場します。
浮舟に逢うために、危険を冒して、夜道を馬で駆けてきた匂宮が、吠えられるという場面です。

お散歩中の写真を撮らせてもらいました


浮舟の浮気を怪しんだ薫が、浮舟の住む宇治の邸の警固のために、夜番の荒くれ男と番犬とを、邸の周囲に配したのでした。

宮(匂宮)は、御馬にてすこし遠く立ちたまへるに、里びたる声したる犬どもの出て来てののしるも、いと恐ろしく、人少なに、あやしき御ありきなればすずろならむものの走り出で来たらむも、いかさまにと、さぶらふ限り心をぞまどはしける。 


犬が何匹も出て来て不気味な荒々しい声で吠え、あたりは暗闇。宮中育ちの匂宮はさぞかし恐ろしかったことでしょう。

宮の御供のものが犬を追い払うのですが、遠巻きにして吠え続けます。

夜はいたくふけゆくに、このもの咎めする犬の声絶えず、人々追ひさけなどするに、弓ひき鳴らし、あやしき男どもの声どもして、「火あやふし」など言ふも、いと心あわたたしければ、帰りたまふほど、言へばさらなり。《浮舟の巻》

 

結局、匂宮は邸に近づくことさえできず、浮舟に逢う事をあきらめて、泣く泣く帰って行ったのでした。
そのことを知らされた浮舟は、薫と匂宮というふたりの男に心を引き裂かれ、この夜、入水することを決心したのでした。









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