今年も、梅の薫る季節がやって来ました。私はこの季節が好きです。
現代に咲く色々な花の中で、王朝人がみたものとさほど変わっていないのが梅の花ではないかと勝手に思い込んでいます。桜に比べると地味で、それでいて薫り高いこの花は、何とはなしに古風ではありませんか。
さて、源氏物語には「梅」と名のつく巻が二つもあります。「梅枝」の巻と「紅梅」の巻です。
ここでは「梅枝」の巻をご紹介しましょう。
この巻は、光源氏が、娘明石姫の裳着と、それに引き続く入内の準備に明け暮れる、たいそうめでたく明るい巻です。
姫の嫁入り道具は色々ありますが、中でも父親源氏の君が心を砕いているのは、薫物(お香)と草子(綴じ本)でした。薫物はこの方ならという方々に依頼して作らせています。
早春のある日、弟の蛍兵部卿が訪ねて来ている所に前斎院から薫物が届きます。そしてこのあと、薫物比べという優雅な催しが行われます。
きさらぎの十日、雨すこし降りて、お前近き紅梅盛りに、色も香も似るものなきほどに、兵部卿の宮わたりたまへり。(略)花をめでつつおはするほどに、前斎院よりとて、散り過ぎたる梅の枝につけたる御文持て参れり。
文を付けた梅の枝と共に、依頼していた薫物が届きました。梅花香の入った白い瑠璃の坏には、梅の枝の造花が添えられ、黒方香の入った紺色の瑠璃の坏には五葉松の造花が添えられています。そして梅の枝にはこんな歌が添えられています。
花の香は散りにし枝にとまらねど うつらむ袖に浅くしまめや
「この散り過ぎた枝のように、盛りを過ぎた私にはなんの色香も残っていませんが、姫様のお袖に私の差し上げた香が薫ることでしょう」と言う意味の歌です。
前斎院は朝顔斎院と呼ばれる女君で、かつて源氏の君が何度も求愛の文を送ったけれども、なびいてはくれなかった方です。
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