新緑の美しい季節となりました。
散策にぴったりの頃ですね。
さて、ところで、源氏物語では新緑を愛でるような表現にあまりお目に掛ることがないのに気づきました。なぜかと考えてみると、青葉若葉の美しさはその下を歩いて、木の間越しに空を見上げた時に感じるもの、お部屋からお庭を見ていてもあまり感じないものかもしれません。
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楓の花と実 |
新緑の中でも、青紅葉の美しさは独特で大好きです。源氏物語ではただ一か所、「若楓」が登場しています。
光源氏が庭の新緑を見て、心がざわつき、養女玉鬘に道ならぬ恋を告白してしまう場面です。
雨のうち降りたる名残の、いとものしめやかなる夕つかた、御前の若楓、柏木などの、青やかに茂りあひたるが、何となくここちよげなる空を見いだしたまひて、「和してまた清し」とうち誦じたまうて、まづこの姫君(玉鬘)の御さまの、にほひやかげさをおぼし出でられて、例の忍びやかにわたりたまへり。(略)「かくて見たてまつるは、夢にやとのみ思ひなすを、なほえこそ忍ぶまじけれ。おぼしうとむなよ」とて御手をとらへたまへれば、・・・・《胡蝶の巻》
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楓の花 |
驚いてわなわなと震える玉鬘に、さすがの源氏も手をにぎり、髪を撫でる以上のことはできませんでした。
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