桔梗、これほどシンプルな形状の花は他にないような気がします。直線だけでできているような、襞も切れ目もない筒状の花びら。
私はどこか寂し気で地味なこの花が好きーそして、咲いているのを見るといつも、浮舟の面影を思いうかべてしまいます。
桔梗は、万葉時代からある花で、かつては、日本全国どこにでも乱れ咲いていたそうです。ところが、最近は草地が無くなったために、絶滅危惧植物となっているということです。確かに、道端に自生して咲いているのを見かけたことはありません。
源氏物語では、桔梗が、ただ一度だけ登場していることは一昨年このブログで紹介しています。蘇生した浮舟が、老尼たちと静かに暮らす小野の山荘の、庭の様子を描いた場面です。
(2017.8.11のブログ「浮舟の見た桔梗」を御参照下さい)
浮舟は、この山荘で、たまたま訪れた横川の僧都に頼み込んで、尼君たちの留守中に、尼になってしまいます。
男というものと無縁の世界に生きる決意を固めたのです。
二人の男性の間で、心を引き裂かれて、自死を決意。それが叶わなかったと知った時、出家というもうひとつの死を選んだのです。
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