2019年8月1日木曜日

「撫子」のその後

この夏もあちこちに撫子の花が咲きました。

帚木の巻で「撫子」として登場した玉鬘はその後、源氏の君の元に引き取られ、源氏の邸、六条院の[花]として、多くの貴公子たちを惹きつけています。
(玉鬘は、実は頭中将の娘なのですが、世間には、源氏の娘ということにしてあります。)

庭には、美しい撫子の花を多く咲かせ、花々の奥にいる玉鬘を連想させようという源氏の君の心組みです。

撫子は小さいけれど群れて咲きますし、色鮮やかな華やかなものですから、ぱっと明るい玉鬘という女性をイメージさせるには適しています。

御前に、乱れがはしき前栽なども植えさせたまはず、撫子の色をととのへたる、唐の大和の、籬いとなつかしく結ひなして、咲き乱れたる夕ばえいみじく見ゆ。皆立ち寄りて、心のままにも折り取らぬを飽かず思ひつつやすらふ。《常夏の巻》


咲き乱れる撫子を手折ることができない・・・・つまり玉鬘を手に入れることができないのを残念に思いながら、貴公子たちは庭先をうろうろ歩いているのでした。
その中には、実は血のつながる兄弟である、ということを知らない柏木なども混じっています。

美しいと評判の女性玉鬘に憧れ、心を尽くす若者たちの姿を見て、ほくそえむ光源氏は、かなり嫌なおじさんの役を演じています。


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