2017.5.21撮影 橘の花 |
古今集の読人知らずの歌
五月待つ花橘の香をかげば
昔の人の袖の香ぞする
はあまりにも有名ですが、源氏物語の「花散里」は万葉集にもあります。
橘の花散る里の郭公(ホトトギス)
片恋しつつ鳴く日しぞ多き
父桐壺院亡き後、政界の重苦しい空気からひと時逃れようと、源氏は、父院の女御の一人であった麗景殿を訪ねます。
橘かおる静かな屋敷には、その妹、花散里がともに住んでいるのです。女御と思い出話をし、花散里と心やすらぐひと時を過ごして、源氏は、世の憂さをしばし忘れることができたのでした。
かの本意の所は、おぼしやりつるもしるく、人目なく、しずかにておはするありさまを見たまふも、いとあはれなり。まづ女御の御方にて昔の御物語などを聞こえたまふに、夜ふけにけり。二十日の月さし出づるほどに、いとど木高きかげども木暗く見えわたりて、近き橘の薫りなつかしくにほひて、女御の御けはひ、ねびにたれど、あくまで用意あり、あてにらうたげなり。(源氏)
「橘の香をなつかしみ郭公
花散里をたづねてぞとふ
いにしへのわすれがたきなぐさめには、なほ参りはべりぬべかりけり。」
(花散里の巻)
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