藤の花は、王朝人が愛した花の一つ。源氏物語にも藤の宴が複数回描かれています。
ある年、内大臣(もと頭中将)家の藤の宴に、源氏の息子夕霧が招かれました。大臣が、彼を婿として迎える機会としたのです。
この場面で、藤の花房は、付文を結ぶ枝として使われたり、花婿となる夕霧に注す酒杯に添えられたりしています。夕霧に捧げられた見事な藤の花房は、美しく育った娘雲居の雁の象徴です。
「我が家の美しい花をあなたに許そう」と大臣が夕霧に告げて来たのです。
・・・・四月朔日ごろ、御前の藤の花、いとおもしろう咲き乱れて、世の常の色ならず、ただに見過ごさむこと惜しき盛りなるに、遊びなどしたまひて、暮れゆくほどのいとど色まされるに、頭の中将(柏木)して、御消息あり。・・・
(内大臣) わが宿の藤の色濃きたそかれに
尋ねやは来ぬ春の名残を
げにおもしろき枝につけたまへり。待ちつけたまへるも、心ときめきせられて、かしこまりきこえたまふ。
(夕霧) なかなかに折りやまどはむ藤の花
たそかれ時のたどたどしくは
と聞こえて・・・・(誘いを受けた夕霧は、父源氏から借りた衣装で念入りに着飾って内大臣家を訪れます。)
頭中将(柏木)花の色濃く、ことに房長きを折りて、客人(夕霧)の御盃に加ふ。(藤裏葉の巻)
藤の花房を盃に添えて渡された夕霧は、どんなふうに盃をもったのでしょうか。かなり持ち難かったでしょうね。
藤波は遠目には美しいけれど、手に取ってみると、あまり優雅な美しさはありません。雲居の雁もそうだったかもしれないなとちょっと思います。
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