真夏の暑い夜のことです。光源氏が方違えで訪れた紀伊の守の屋敷に、主の義母に当たる女性が泊まっていました。このころの、まだ17歳という若さの源氏は、まさに恋の狩人。相手のことは考えず、興味を持った女性にはすぐに言い寄っていました。この夜も無理にその義母と契ったのでした。けれども、その後、彼女は源氏を避け続けます。ある夜も、危うい所を逃れたのでしたが、後に、蝉の抜け殻のような薄い着物を残してしまいました。源氏はその着物を持ち帰って彼女の匂いを嗅いで懐かしみます。
このことから彼女は空蝉と呼ばれます。
(源氏の君は)しばしうち休みたまへど、寝られたまはず。御硯、急ぎ召して、さしはへたる御文にはあらで、畳紙に、手習のやうに書きすさびたまふ。
うつせみの身をかへてける木のもとに
なほ人がらのなつかしきかな
と書きたまへるを、(小君は)懐に引き入れて持たり。かの薄衣は、小袿のいとなつかしき人香に染めるを、身近くならして、見ゐたまへり。(空蝉)
空蝉は小君(弟)が持ち帰った源氏からの手紙を読んで、着物が汗臭かったのではないかと気が気ではありません。こんな貴公子に独身の時に巡り合えていたらとひそかに若く美しい源氏の君を思うのでした。
![]() |
蝉の抜け殻は葉っぱの裏に多く付いている |
▶『岸本久美子フェイスブック』はコチラ
▶『岸本久美子のツイッター』はコチラ
0 件のコメント:
コメントを投稿