けれども、今回は、宇治十帖から薫を登場させてみました。
深く愛していたにもかかわらず、契りを結ぶことなく亡くなった大君を惜しみ、また、その妹中君を、匂宮に譲ってしまったことを悔い、眠れぬ一夜を過ごした薫。夜明けに、ふと、庭の朝顔に目が留まりました。
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我が家に毎朝咲く |
常よりも、やがてまどろまず明かしたまへる朝に、霧の籬より、花のいろいろおもしろく見えわたるなかに、朝顔のはかなげにてまじりたるを、なほことに目とまるここちしたまふ。「明くる間咲きて」とか常なき世にもなずらふるが、心苦しきなめりかし。格子も上げながら、いとかりそめにうち臥しつつのみ明かしたまへば、この花のひらくるほどをも、ただひとりのみぞ見たまひける。
やがて薫は起き上がって、その朝顔を持って中君を訪ねることにします。
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野辺の朝顔・源氏物語の朝顔はこんな感じ? |
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これも我が家の朝顔 |
出でたまふままに、おりて花の中にまじりたまへるさま、ことさらに艶だち色めきてももてなしたまはねど、あやしく、ただうち見るになまめかしくはづかしげにて、いみじくけしきだつ色好みどもになづらふべくもあらず、おのづからをかしくぞ見えたまひける。朝顔を引き寄せたまふ、露いたくこぼる。
「 今朝の間の色にやめでむ置く露の
消えぬにかかる花と見る見る
はかな」
とひとりごちて、折りて持たまへり。(宿木の巻)
中君の所を訪れて、この露のかかった朝顔を扇に載せて御簾のうちに差し入れたのでした。
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