2017年7月8日土曜日

源氏物語の七夕



 御堂関白記には、7月7日の夜、庭中にお祭りのように人が集まって、「二星会合」を見たという記事があります。この夜は、宮中でも節会の一つ、乞巧奠の儀が行われました。唐から伝わって平安時代には盛んに行われたようです。清涼殿東庭に筵を敷いて、お燈明を捧げ、お香をたき、酒肴果物を供えて、牽牛織女の出会いを祈願し、その出会いを見たそうです。
 この行事は、貴族の家々でも行われたようです。女性たちが裁縫の腕の上達を祈願する祭りでもあったことから、五色の糸を通した針7本を供えたとも言います。
 旧暦7月7日ですから今の暦で言えば、8月中旬。天の川も昔はくっきり見えたのでしょうね。

 白楽天の長恨歌には、楊貴妃亡き後、玄宗皇帝が、かつて、7月7日の夜、二人で永遠の愛を誓い合ったことを想起して涙するという一節がありますが、源氏物語では、眠れぬ夜を過ごした光源氏が、今は亡き紫の上を思って、涙を流しています。

 7月7日も、例に変はりたること多く、御遊びなどもしたまはで、つれづれにながめ暮らしたまひて、星合見る人もなし。まだ夜深う、一所起きたまひて、妻戸を押しあけたまへるに、前栽の露いとしげく、渡殿の戸よりとほりて見わたさるれば、出でたまひて、
  たなばたの逢ふ瀬は雲のよそに見て
       別れのにはに露ぞおきそふ

                (幻の巻)

 星たちは年に一度でもあうことができるが、自分たちはもう逢えないという悲しみ。幻の巻の源氏はどこをとっても、哀切感を漂わせています。




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