2017年10月14日土曜日

紫苑揺れる秋の庭

紫苑の花も、藤袴や女郎花と同じように、すらりと伸びた茎の上に、まとめて花を着けます。そして、花の蕾の時期から色あせてゆくまでの期間がとても長い点もこれらの花に共通しています。源氏物語の中では、「紫苑」という言葉は花としてよりも、秋の衣裳の色目、襲(かさね)の色目として使われている場合が多いようです。
 
源光庵にて10月7日撮影
秋好む中宮と呼ばれる方のお庭には、秋の草花が美しく咲き誇っていました。野分の翌朝の、その御殿の様子を描いた場面では、実際の花と衣裳の色目と両様の意味で紫苑が登場しています。

童女おろさせたまひて、虫の籠どもに露飼はせたまふなりけり。紫苑、撫子、濃き薄き衵(あこめ)どもに、女郎花の汗衫(かざみ)などやうの、時にあひたるさまにて、四五人連れて、ここかしこの草むらに寄りて、いろいろの籠どもを持てさまよひ、撫子などの、いとあはれげなる枝ども取り持て参る霧のまよひは、いと艶にぞ見えける。吹き来る追風は、紫苑ことごとに匂ふ空も、香のかをりも、(中宮が)触ればひたまへる御けはひにやと、いと思ひやりめでたく、心懸想せられて、立ち出でにくけれど、・・・(野分の巻)


朝ぼらけのお庭をのぞいているのは、野分の見舞に訪れた夕霧です。色とりどりの虫籠を手にした女の子たちが、それぞれに異なる秋の色目の衣裳を身に着けて、秋草の庭をさまよっています。何とも美しい光景です。ずっとのぞき見していたかったけれど、そうも行かず、この後夕霧は咳払いをして、庭に歩み入ります。

 オマケ
鷹峯源光庵では、ホトトギスの花も見頃でした。鳥のホトトギスの腹の模様と花の斑が似ていることからこの名がついたそうです。因みに源氏物語には、鳥のホトトギスしか登場しません。



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