2018年10月1日月曜日

源氏物語にも登場する台風


元々、京都は滅多に台風の来ない土地柄ですが、今年は当たり年。
21号襲来の折には市内あちこちで大木が倒れたり折れたりして驚きました。屋根瓦を飛ばされた家も多数あり、いまだにブルーシートがあちらこちらで目につきます。

大木が三本倒れている

王朝時代にも、ごくまれに、大きな台風が京を襲うことがあったようです。
源氏物語には、まさにそれそのものの「野分(台風のこと)」という巻があります。

光源氏の息子夕霧は、台風の吹き荒れ始めた頃、一人暮らしの祖母を気遣って、泊まりに行きます。

宮(祖母の大宮)、いとうれしう、たのもしと待ちうけたまひて、「ここらの齢に、まだかく騒がしき野分にこそあはざりつれ」と、ただわななきにわななきたまふ。大きなる木の枝などの折るる音も、いとうたてあり。御殿の瓦さへ残るまじく吹き散らすに、「かくてものしたまへること」とかつはのたまふ。


宝ヶ池公園・折れた木で道が塞がれている


木の枝が折れたり、瓦が吹き飛んだりしています。「長く生きて来たけれど、こんな激しい台風は初めてだ」と恐ろしさに震えながら大宮が言っています。そして、こんな危ない中をよく来てくれたこと、 夕霧の来訪を喜びました。


この夜一晩、台風は吹き荒れ、朝はすっかり風もやみました。

勤勉な夕霧は、祖母の所から、まず、養母の花散里の舘に被害状況を見に行き、壊れた所の修理を指示しておいてから、その後、父光源氏の舘、南の御殿へも台風見舞いに行きます。

南の御殿に参りたまへれば、まだ御格子も参らず。おはしますに当れる高欄に押しかかりて見わたせば、山の木どもも吹きなびかして、枝ども多く折れ伏したり。草むらはさらにもいはず、檜皮、瓦、所々の立蔀、透垣などやうのもの乱りがはし。日のわづかにさし出でたるに、愁へ顔なる庭に露きらきらとして・・・・。


台風の過ぎたあと、築山の木々は折れ、草はなぎ伏せられ、屋根の檜皮や瓦が吹き飛ばされて落ちている。そして、垣根や塀は傾いたり倒れたりしている・・・・・そこに台風一過の明るい太陽が顔を出して庭の草の露がきらきら輝く・・・・・まったく今と同じです。


根から倒れてしまった木







<<予告>>朗読会 第二弾 日程決定!

 【声と響き 木霊する源氏物語】Vol.2
      朗読 岸本久美子 唄 上野洋子
 【日時】 2019年4月21日(日)14:00 開演
 【会場】 京都堀川音楽高等学校 音楽ホール

 詳しくは後ほどお知らせいたします。

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