2017年9月1日金曜日

匂宮が好んだ香る秋の花

吾木香
女郎花、桔梗に続いて秋の草花が咲き始めました。ただ、現代まで自生して生き残っている日本の草花は本当に減ってしまいました。王朝時代にはどこにでも揺れていた女郎花や藤袴も本当に見かけなくなりました。草原というものも減りました。秋の野に咲き乱れる花々を見ることがなくなったのは残念です。
 源氏物語では、生まれつき体に芳香をもつ薫に対抗して、匂宮が、懸命に香りを身に染み込ませようとしたことが書かれています。そんな匂宮は花も香りの強いもの、香りに因むものを愛したとあります。

藤袴

(薫が)かくあやしきまで人の香にしみたまへるを、兵部卿の宮(匂宮)なむ、異事よりもいどましくおぼして、それは、わざとよろづのすぐれたるうつしをしめたまひ、朝夕のことわざに合はせいとなみ、御前の前栽にも、春は梅の花園をながめたまひ、秋は、世の人のめづる女郎花、小牡鹿の妻にすめる萩の露にも、をさをさ御心移したまはず、老を忘るる菊に、おとろへゆく藤袴、ものげなきわれもかうなどは、いとすさまじき霜枯れのころほひまでおぼし捨てずなど、わざとめきて、香にめづる思ひをなむ、立てて好ましうおはしける。(匂兵部卿の巻)


女郎花
春は梅ばかりを好み、秋は菊と藤袴、吾木香を枯れるまで庭に残したとあります。吾木香(吾亦紅とも書きます)は香りはないのですが、香という文字を含むが故に愛したのでしょうか。本文ではこの後で、「光源氏という方は、そんな風になにかに表立って執着なさることはなかったのだが。」とやんわり匂宮の性癖を批判しています。

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来年3月24日土曜日の午後二時から二条城前の堀川音楽高校で源氏物語に題材をとった公演を予定しています。是非ご予定下さい。
詳細はまた改めてご連絡いたします。



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