2019年5月4日土曜日

青紅葉の頃


新緑の美しい季節となりました。
散策にぴったりの頃ですね。


さて、ところで、源氏物語では新緑を愛でるような表現にあまりお目に掛ることがないのに気づきました。なぜかと考えてみると、青葉若葉の美しさはその下を歩いて、木の間越しに空を見上げた時に感じるもの、お部屋からお庭を見ていてもあまり感じないものかもしれません。


楓の花と実

新緑の中でも、青紅葉の美しさは独特で大好きです。源氏物語ではただ一か所、「若楓」が登場しています。



光源氏が庭の新緑を見て、心がざわつき、養女玉鬘に道ならぬ恋を告白してしまう場面です。

雨のうち降りたる名残の、いとものしめやかなる夕つかた、御前の若楓、柏木などの、青やかに茂りあひたるが、何となくここちよげなる空を見いだしたまひて、「和してまた清し」とうち誦じたまうて、まづこの姫君(玉鬘)の御さまの、にほひやかげさをおぼし出でられて、例の忍びやかにわたりたまへり。(略)「かくて見たてまつるは、夢にやとのみ思ひなすを、なほえこそ忍ぶまじけれ。おぼしうとむなよ」とて御手をとらへたまへれば、・・・・《胡蝶の巻》 

楓の花
驚いてわなわなと震える玉鬘に、さすがの源氏も手をにぎり、髪を撫でる以上のことはできませんでした。






2019年4月27日土曜日

第二回木霊する源氏物語公演お礼

多くの皆さまの応援によって、第二回公演を終えることができました。


御来場くださった皆様、蔭で何かと支えて下さった方々、本当にありがとうございました。

今回は、明石の君と六条御息所という、一見似た風貌ながら、全く正反対の性格の持ち主をとりあげて、物語を作ってみました。


また、「六条御息所の物語」では能の『葵上』を意識した舞台づくりを試みて、演劇的な要素を盛り込んでみました。舞台に置いた着物が人物を象徴するという手法です。


まだまだ、研究すべきことは、多くあると改めて感じました。



皆様から、ご批評ご意見を頂ければ幸いです。










2019年4月15日月曜日

間もなく締め切り 朗読会 声と響き~木霊する源氏物語~



声と響き 木霊する源氏物語
朗読と唄で織りなす物語[第二弾]

【第一部 明石の君の物語/第二部 六条御息所の物語】

― 忍耐に忍耐を重ねながらも、なだらかな心を保って最後に幸せを手に入れた明石の君 ―

― 高貴な美しさの裏に隠した、狂おしいばかりの情熱を制御しきれなかった六条御息所 ―

好評であった前回に引き続いて、古典の世界を声の響きのうちに呼び寄せようとする試み第二弾をお届けします。前回と同じく源氏物語の世界を、語りと朗読、唄で構成しています。今回は女君の中から、対照的な存在ともいえるふたり「明石の君」と「六条御息所」をとりあげてみました。



【日時】 2019年4月21日(日)14:00 開演 (13:00 開場/15:30 閉演)

【会場】 京都堀川音楽高等学校 音楽ホール
京都市中京区油小路通御池押油小路町238―1
市営地下鉄東西線 二条城前駅 下車 2番出口 徒歩2分/市バス 堀川御池 下車 徒歩2分
*御池通側の南門(グランド入口)からお入りください。
*駐車場、駐輪場はありません。公共の交通機関をご利用ください。


【共催】 京都市教育委員会

【後援】 古典の日推進委員会
【前売券 販売期限】 2018年12月1日(土)~2019年4月20日(土)まで 
【入場料】 前売券1,500円/当日券2,000円/高校生以下無料/全席自由席

前売券「チケットぴあ」でご購入
(高校生以下の方は、ファックスまたはeメールにてお申し込みください)
*セブン-イレブン、チケットぴあ各店舗でのご購入
(Pコード「490-943」)がお得です。


【個人情報のお取り扱い】 お申し込みに際し、みなさまよりご提供いただきました情報は、個人情報保護法に則り、公演会事務局にて適切に管理いたします。
【チケットのお取り扱い】 チケットのご購入後にキャンセルすることはできません。
【お問い合せ】 岸本久美子 公演会事務局
電話 075-701-0900 eメール kumiko.kishimoto.pro@gmail.com









2019年3月23日土曜日

姫君も食べた土筆


春風に誘われて土筆摘みにでかけました。いつもの場所、今年もありました。




王朝時代の人々にとっては、土筆も、多分貴重な食材だったことでしょう。油のなかった時代、おひたしにして食べていたのでしょうか。うちでは炒め物にしますが。

袴をとって炒めます

源氏物語では宇治十帖で、父八の宮に続いて、姉君も亡くなって、寂しく暮らす中君の元に、山の阿闍梨から蕨と土筆が届けられています。「つくし」は「つくづくし」と言われていたようです。




阿闍梨のもとより、年あらたまりては、何ごとかおはしますらむ。御祈りは、たゆみなくつかうまつりはべり。今は一所の御ことをなむ、やすからず念じきこえさする。など聞こえて、蕨、つくづくし、をかしき籠に入れて、「これは童べの供養じてはべる初穂なり」とてたてまつれり。《早蕨の巻》




阿闍梨の手紙には「今となりましては姫君お一人の延命息災をひたすら仏に祈っております」とあって、ただ一人残された中君を案じています。

その思いを蕨と土筆に籠めて贈ったものです。
結局中君は一人で宇治に寂しく暮らすことはできず、匂宮に引き取られて京に移り住むこ
とになります。










<<朗読会を開催します>>
~声と響き 木霊する源氏物語~   朗読と唄で織りなす物語[第二弾]
【第一部 明石の君の物語/第二部 六条御息所の物語】

【日時】 2019年4月21日(日)14:00 開演
           (13:00 開場/15:30 閉演)
【会場】 京都堀川音楽高等学校 音楽ホール
【入場料】 前売券1,500円/当日券2,000円/高校生以下無料/全席自由席
 「チケットぴあ」でご購入  Pコード「490-943」
     ※チケットのご購入後にキャンセルすることはできません。
【前売券 販売期限】 2018年12月1日(土)~2019年4月20日(土)まで

2019年3月18日月曜日

榊も樒も花をつける頃



梅が終わり、桜が待たれるこの季節。様々な木々が一斉に花をつけます。
山茱萸(サンシュユ)や金縷梅(マンサク)、沈丁花・・・そして、榊も樒も。

榊の花

樒の花

現代の私たちも神棚には榊、仏壇には樒と区別してお供えしますが、源氏物語の時代にも、同じように区別されていたことが、物語の記述からわかります。

榊が出て来る場面はいくつかあるのですが、一つは光源氏が御願果たしの住吉詣でをした折の場面。人々が榊葉を手に、夜を徹して神楽を踊り狂っています。


榊の枝

ほのぼのと明けゆくに、霜はいよいよ深くて、本末もたどたどしきまで、酔ひ過ぎにたる神楽おもてどもの、おのが顔をば知らで、おもしろきことに心はしみて、庭熾も影しめりたるに、なほ「万歳、万歳」と、榊葉を取り返しつつ祝ひきこゆる御世の末、思ひやるぞいとどしきや。《若菜下の巻》 

他に、榊が多く登場しているのは、は言わずと知れた「賢木」の巻です。源氏の君が嵯峨野野々宮に六条御息所を訪ねる場面では二人の間で榊を詠み込んだ歌の贈答があります。

そしてさらに、伊勢に旅立つ御息所が、自分の邸の前を通り過ぎる時、源氏の君は榊に付けた歌を届けさせています。


榊の木の姿

二条の院の前なれば、大将の君(源氏)いとあはれにおぼされて、榊にさして、ふりすてて今日は行くとも鈴鹿川 八十瀬の波に袖はぬれじやと聞こえたまへれど、いと暗うものさわがしきほどなれば、またの日、関のあなたよりぞ御返りある。《賢木の巻》 

一方の樒はどうでしょう。こちらは二回しか出てきません。
一つは出家した朧月夜の君が、源氏の君の歌への返事として届けた歌。これが樒の枝に付けられていました。



「あま舟にいかがは思ひおくれけむ 明石の浦にいさりせし君回向には、あまねきかどにてもいかがは。」とあり。濃き青鈍の紙にて、樒にさしたまへる、例のことなれど、いたく過ぐしたる筆づかひ、なほ古りがたくをかしげなり。《若菜下の巻》 


もう一度は、宇治十帖で、薫が、八の宮の娘大君と一夜を契るべく口説く場面です。二人が横になっているのは仏間で、お香や樒が匂っています。

しかも、大君はまだ父の喪中で、墨染の衣です。拒む大君と無理に契る気にはとてもなれず、結局、薫は一晩やさしく語り合っただけで、そのまま帰るしかありませんでした。

樒は独特の香りがあるので、この頃は仏前に供える水に散らして用いたようです。

樒の木の姿

御かたはらなる短き几帳を仏の御方にさし隔てて、かりそめに添ひ臥したまへり。名香のいと香ばしく匂ひて、樒のいとはなやかに薫れるけはひも、人よりはけに仏をも思ひきこえたまへる御心にて、わづらはしく、墨染の今さらに、をりふし心焦られしたるやうに、あはあはしく、(略)などせめてのどかに思ひなしたまふ。《総角の巻》








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【第一部 明石の君の物語/第二部 六条御息所の物語】

【日時】 2019年4月21日(日)14:00 開演
           (13:00 開場/15:30 閉演)
【会場】 京都堀川音楽高等学校 音楽ホール
【入場料】 前売券1,500円/当日券2,000円/高校生以下無料/全席自由席
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2019年3月4日月曜日

梅花薫る頃




今年も、梅の薫る季節がやって来ました。私はこの季節が好きです。
現代に咲く色々な花の中で、王朝人がみたものとさほど変わっていないのが梅の花ではないかと勝手に思い込んでいます。桜に比べると地味で、それでいて薫り高いこの花は、何とはなしに古風ではありませんか。

さて、源氏物語には「梅」と名のつく巻が二つもあります。「梅枝」の巻と「紅梅」の巻です。
ここでは「梅枝」の巻をご紹介しましょう。
この巻は、光源氏が、娘明石姫の裳着と、それに引き続く入内の準備に明け暮れる、たいそうめでたく明るい巻です。
姫の嫁入り道具は色々ありますが、中でも父親源氏の君が心を砕いているのは、薫物(お香)と草子(綴じ本)でした。薫物はこの方ならという方々に依頼して作らせています。

早春のある日、弟の蛍兵部卿が訪ねて来ている所に前斎院から薫物が届きます。そしてこのあと、薫物比べという優雅な催しが行われます。


きさらぎの十日、雨すこし降りて、お前近き紅梅盛りに、色も香も似るものなきほどに、兵部卿の宮わたりたまへり。(略)花をめでつつおはするほどに、前斎院よりとて、散り過ぎたる梅の枝につけたる御文持て参れり。 


文を付けた梅の枝と共に、依頼していた薫物が届きました。梅花香の入った白い瑠璃の坏には、梅の枝の造花が添えられ、黒方香の入った紺色の瑠璃の坏には五葉松の造花が添えられています。そして梅の枝にはこんな歌が添えられています。

花の香は散りにし枝にとまらねど うつらむ袖に浅くしまめや 


「この散り過ぎた枝のように、盛りを過ぎた私にはなんの色香も残っていませんが、姫様のお袖に私の差し上げた香が薫ることでしょう」と言う意味の歌です。
前斎院は朝顔斎院と呼ばれる女君で、かつて源氏の君が何度も求愛の文を送ったけれども、なびいてはくれなかった方です。











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【日時】 2019年4月21日(日)14:00 開演
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2019年2月27日水曜日

源氏物語に登場する犬



以前ご紹介しましたように、源氏物語の中で、猫は、結構重要な役割を担っていました。では、犬はどうでしょう。

当時、猫は貴族の愛玩動物として、珍重されていたようですが、犬のほうはペットではありませんでした。専ら実用的なものとして、番犬や猟犬として役割を担っていたようです。

恐ろし気な犬はなかなか見つからず
源氏物語では、犬は、一回だけ、恐ろしい番犬として登場します。
浮舟に逢うために、危険を冒して、夜道を馬で駆けてきた匂宮が、吠えられるという場面です。

お散歩中の写真を撮らせてもらいました


浮舟の浮気を怪しんだ薫が、浮舟の住む宇治の邸の警固のために、夜番の荒くれ男と番犬とを、邸の周囲に配したのでした。

宮(匂宮)は、御馬にてすこし遠く立ちたまへるに、里びたる声したる犬どもの出て来てののしるも、いと恐ろしく、人少なに、あやしき御ありきなればすずろならむものの走り出で来たらむも、いかさまにと、さぶらふ限り心をぞまどはしける。 


犬が何匹も出て来て不気味な荒々しい声で吠え、あたりは暗闇。宮中育ちの匂宮はさぞかし恐ろしかったことでしょう。

宮の御供のものが犬を追い払うのですが、遠巻きにして吠え続けます。

夜はいたくふけゆくに、このもの咎めする犬の声絶えず、人々追ひさけなどするに、弓ひき鳴らし、あやしき男どもの声どもして、「火あやふし」など言ふも、いと心あわたたしければ、帰りたまふほど、言へばさらなり。《浮舟の巻》

 

結局、匂宮は邸に近づくことさえできず、浮舟に逢う事をあきらめて、泣く泣く帰って行ったのでした。
そのことを知らされた浮舟は、薫と匂宮というふたりの男に心を引き裂かれ、この夜、入水することを決心したのでした。









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